2019年年末、1通の封書が届いた。そこにはナンバーズで合計200万円の当せん証明書コピーと手紙が入っていた。そこには元彼女にまつわる数字で当てました、という内容が。さっそく送り主に連絡を取り、山形県へと向かった!
大阪北部地震、同僚の一言思い出したのは元彼女
「今日は僕が体験したことをお話ししますね」
そう少し怖い話のようなフリで話し始めたのは、昨年の7月から9月の間に立て続けにナンバーズをヒットさせ、総額200万円以上を当てた今回の主人公・ファンタジスタさんだ(仮名)。
「きっかけは大阪北部地震でした」
話は、いまから2年近く前の2018年、大阪北部で発生した地震にさかのぼる。
「以前から、ロトやナンバーズを買っていたんですが、仕事も忙しかったので、7、8年くらい買っていなかったんです」
購入していたころは、ナンバーズ4で140万円ほどストレートで当てた経験もあったファンタジスタさん。
「ある日、会社の同僚Aさんが、ナンバーズ3のボックスに当たったという話をしてきたんですよ」
そこで以前、自分がナンバーズ4でストレートを当てたことがあるという話をしたところ……。
「そんなすごい当たりをしたことがあるなら、また買ってみたら? って言われたんです」
なんとなく再びナンバーズを買い始めたファンタジスタさん。
「全然、当たりませんでしたよ(笑)」
買うのは多くても1回で5口のファンタジスタさん。勝負勘が鈍っていることもあり、結果は散々。
「そんなときに、好きなアーティストのひとり氷室京介さんの曲を聴いていたんです」
『LOVER,S DAY』という曲のなかに、もうあれほど誰かを大切に思うこと……と聴いた瞬間だった。
「昔お付き合いしていた人がよぎったんです。イクコさんっていうんです。それじゃ『195』を買ってみようかな、って(笑)」
するとセットで購入した第5213回(2019年7月4日抽せん)、その数字は見事にセットボックスに当たった。
第5213回ナンバーズ3「951」セットボックス1万1000円当せん!
「久しぶりの当たりだったので興奮しましたよ!」
イクコさんに感謝するとともに、ふと彼女のことをいろいろと思い出していた。
「僕、こう見えて慶應大学の経済学部を出ているんです。でも、就職氷河期世代でうまく就職できなかったんです」
名門大学を卒業しても、望むような職に就くことが難しい時代だった。そんなとき目を向けたのが安定した職業である公務員だった。
「宮城県の公務員受験の専門学校に通ったんですよ。周りは18、19才の高校を卒業した人ばかりでした」
そんななか、初登校を迎えたファンタジスタさん。
「教室に入るときは、大きな声で挨拶しようと決めてたんですよ」
勢いよく教室に入ると、「おはようございます」と目いっぱい声を張った。
「まあ、初対面の人がいきなり大きな声で挨拶してきても、応えてくれるはずもなく(笑)」
ところが、ドアの前の席にいた女性だけは、「おはようございます」と返してくれたのだという。
「それがイクコさんでした。まあ、あの距離で言われたから、返してくれたのかなーなんて」
それをきっかけに話をする仲になり……。
「同じ年齢だったことで話も弾んで。そしたら一目惚れだったらしく入学5日目に告白されて、付き合うことになったんです」
タレントのローラさん似だったというイクコさん。かなりの美人だったようだ。
「彼女のおかげで楽しい専門学校時代を過ごせましたよ。でも……」
卒業をきっかけに、別れてしまった。
「ずっと一緒にいたかったんですが、就職も決まらず、男として彼女を幸せにする自信がなかったんです。きっと僕以外にもいい人が見つかるだろうと思って、別れました」
それでもいいという彼女を振り切り、別々の道に進んだのだ。なんとも真面目なファンタジスタさん。
「自責の念にかられましたねー。しっかりとした職に就けていればと……」
悲恋を背に、地元の山形へと帰郷したファンタジスタさんだった。
「195」セットボックスから立て続けに当たりが続いた!
そんな若かりし日の甘酸っぱい思い出を聞かせてくれたファンタジスタさんだが、昨年の「195」セットボックスを皮切りに……。
「実は、『195』は気になって、その後もちょこちょこ買っていたんです」
すると、セットボックスで当てた第5213回からわずか18回後の第5231回。
「僕の買い方は、ストレートとセットなんですが、この日、『195』が出たんです」
ストレート、セットストレートで合計19万3800円当せん!
第5231回ナンバーズ3「195」ストレート+セットストレート合計19万3800円当せん!
「びっくりしました。同時にイクコさんに感謝しましたねー」
その後もファンタジスタさんの快進撃は続く。第5245回のナンバーズ4でセットボックスを、第5247回もナンバーズ4でセットボックスを続けて当せん。
第5245回ナンバーズ4「8440」セットボックス5万3500円当せん!
第5247回ナンバーズ4「9259」セットボックス4万8400円当せん!
「数字は、ちょうどくじを買う前に見た車のナンバーだったり、ひらめきだったりです。第5247回はイクコさんの誕生日だったので余計にびっくりしました」
これといって攻略法がなくても、乗っているときは何を買っても当たるのが、宝くじ。こうした経験をした高額当せん者も多い。
「仕上げは、第5255回の『9854』でした」
なんとストレート、セットストレートの双方を射抜き、合計170万7400円をゲット。
第5255回ナンバーズ4「9854」ストレート+セットストレート合計170万7400円当せん!
「驚きしかなかったですよ!」
予期せぬ大当たりに喜びの頂点にいたファンタジスタさん。ところが、ちょうどこのころから……。
「よくイクコさんの夢を見るようになったんです」
付き合っていたころの生活風景、2人で沖縄旅行に行った夢……などなど。
「なんでこんな夢ばかり見るんだろうなあとは思いました。でも、さして気にはしていなかったんです」
するとある日、夕食でインスタントラーメンを作っていたときに。
「不注意から右足の甲を大やけどしてしまったんです」
即病院に運ばれた。重症度がⅡ度の熱傷だった……。
「医者には、切断の可能性もある、って言われて」
しかし、ここから驚くべき回復力を見せるファンタジスタさん。
「4日後には皮膚ができてるって言われたんです。先生も首をかしげるほどの回復力だったと言っていました(笑)」
不思議なことは、これだけではなかった。
「担当してくれた看護師さんが、すごくイクコさんに似ていたんですよ」
妙な胸騒ぎを覚えたという。
「入院中も、イクコさんの夢はたびたび見ていました」
そうしているうちに、やけどは皮膚移植もせずに完治。無事に退院に至った。
「ふとイクコさんに連絡を取ってみようかなって思ったんです……」
東相馬にいたイクコさんは震災で帰らぬ人になっていた
連絡をしたものの、電話番号は使われていなかった。
「胸騒ぎは日に日に強くなっていきました」
ここで専門学校を卒業してイクコさんは地元に帰ったことを思い出したファンタジスタさん。
「イクコさん、福島県の相馬出身なんですよ」
専門学校卒業後、未曽有の大惨事が東北地方を中心に起こった。東日本大震災である。奇しくも、相馬は甚大な被害を受けた地域のひとつ。
「まさかとは思っていたんですが、どうしても調べる勇気がわいてこなかったんです」
そう、亡くなった方のお名前を調べるということ……。相馬では津波によって多くの尊い人命が失われた。行方がいまでもわからない人も少なくない……。
「連絡もつかないし、もし調べて名前がなければ大丈夫って思って」
意を決して、亡くなった方のお名前を調べていった。
「身元が判明したという故人の名簿に、イクコさんの名前がありました」
全身が震え、涙が止まらなかった。
「何度も確認して、でも間違いなくて……」
その夜、焼酎を2本空け、朝まで泣き続けたファンタジスタさん。
「もし、専門学校を卒業したときに一緒になっていれば、彼女は津波に巻き込まれることはなかったんじゃないかって……」
どうしようもないことだとわかっていても、自分を責めた。
「イクコさん、自分が死んでしまったことに気づいてほしかったんだと思います」
ナンバーズの当たりには「イクコ」さん絡みが多い、そして入院した病院にはイクコさん似の看護師……。
「私はもういないけど、楽しい思い出をたくさんありがとう、って言われている気がしたんです」
そうグッと堪えながら言葉を発したファンタジスタさん。
「今年の夏休みに相馬に行こうと思っています。どこに眠っているのかはわからないですが、見つけてお花とお線香をあげてきたいと思います」
ちなみにファンタジスタさんは独身。もしかしたら、またどこかでイクコさんと出会って、共に人生を歩むことを頭のどこかで考えていたのかもしれない。いまとなっては叶わない夢となってしまったが……。
「相馬に行ったときに、自分がどう感じるかで、今後の人生についても考えてみたいと思います」
さらにこう続けてくれた。
「もしかしたら、ナンバーズの当たりは彼女からのプレゼントだったのかもしれませんね」
そういって顔を上げたファンタジスタさん。その目は、何かを決意した力強く、そしてとてもやさしい目をしていた。
※この記事は『ロト・ナンバーズ「超」的中法2020年5月号』の[夢の高額当せん者インタビュー]を一部抜粋変更したものです