編集部に届いた一通のお便り。そこには7枚にわたるくじ券のコピーが封入されていた。ロト6の購入口数は35口。その購入数字を見てみると、どれも似通った数字だった。それにしても一度に35口買いとはなかなか思い切った買い方だ。その買い方にはどんな狙いがあったのか、さっそく電話で取材を行った。
偶然?必然?報われない日が一転!
ワクチン予約に苦戦、売り場は休み。それでも購入を諦めなかった末の当せん!
S・Sさん(仮名)東京都・70才
「その日は本当についていなくて」
口火を切ったのは、高額当せんしたにもかかわらず、意表をつく一言。電話から聞こえる声の主は、今回の主人公であるS・Sさん(仮名・70才)。ロト6で3等5口をはじめ、4等20口、5等10口の計193万1500円を獲得した当せん者である。
▲赤線は3 等、黄線は4 等、下線なしは5 等を示す
第1583回ロト6「05 07 16 34 39 41(29)」
3等35万3,500円×5口+4等7,700円×20口+5等1,000円×10口
計193万1,500円当せん!!
第1583回のロト6抽せんが行われた5月6日。この日、S・Sさんは朝から電話とにらめっこしていた。
「ワクチンの予約です。私も高齢者の部類に入りますから早く打ちたくて」
そう、目下ニュースで話題の新型コロナウイルスのワクチン接種。S・Sさんは前期高齢者になるため、早めに接種券が届いた。
一刻も早く接種を受けたいと考えたS・Sさんは電話で予約を取ろうと、さっそく予約開始時間を待って窓口にかけた。しかし、何度かけても「ただいま混みあっております」のコール。
「予約が取れたのは夕方でしたね。もう疲労困憊でした」
そのときを思い出したのか、電話口の声も心なしかトーンダウン。とてももどかしい経験をされたようだ。
もう時間がない。サンダル履きで慌てて宝くじ売り場へ。しかしここでも不運が重なった。
「いつも行く売り場が休みだったんです」
抽せん時刻目前、足元はサンダル。
「今日は買うのを諦めようか……」そんな思いが頭をよぎった。
「でもやっぱり諦められなかったんですよね。以前も買わないときに限って狙っていた数字が出て悔しい思いをしたものですから」
ロトやナンバーズあるあるである。しかも、それだけで話は終わらない。
「この日はどうしてもロトを買いたかったんです」
よほど予想に自信があったということだろうか?
「実は私、今回当たるまでロトは本当にご無沙汰だったんですよ」
聞けば、今年に入って初めて買ったロト6だったというのだから驚きだ。そもそもロトを買い始めたのもここ数年の話。もともとはナンバーズを中心に楽しんでいた。
「ナンバーズ歴は20年くらいかな。当時、ちょうど買っていた年末ジャンボのくじ券の末尾『4449』でナンバーズ4を買ったらセットストレートが当たって」
以来、電話番号の下4ケタや目についた4ケタの数字をやみくもに買っていたが、なかなか当たりが来ない。
そうこうしているうちに、今度はロトの存在を知ったS・Sさん。さっそく買ってみようかと興味を持つも……。
「ナンバーズも当たらないのに、さらに当せん確率が低いロトはもっと難しいんじゃないのって息子に言われてしまって(笑)」
なかなかしっかりした息子さんだ。結局、彼の一言が決め手となり、ロトには手を出さないまま十数年が過ぎた。
「最近はナンバーズで毎日予想を立てるのが大変だと感じていたんです。その点、ロトは6なら月曜日と木曜日、7なら金曜日だけなので」
普段、ロトを買うときは1年前もしくは2年前の同月の当せん数字をそのまま1口。そこに、クイックピックを混ぜて合計5口買うのがS・Sさんのセオリーだ。
「ロトも毎回買う訳ではないんです。抽せん日は決まっていますけど、やっぱり毎回となるとしんどいので、気が向いたときかな」
となると、今回の高額当せんも気が向いたからなのかと思いきや……。
結果オーライ!?重複した数字を買うも収支プラマイゼロ!
「ワクチン予約をするにあたって、接種券やら保険証やらいろいろと調べるのに引き出しを漁っていたら、たまたま昔買った宝くじ雑誌の切り抜きが出てきたんです」
そこにはキャリーオーバー中のロト6の攻略法が書かれていた。
「3つの数字は01~36のうち、キャリーオーバー中の出目の傾向から選んで、残り3つの数字は37~43から流して買うというものでした」
繋がらない電話を片手に、切り抜きを参考に数字をピックアップ。前半3数字は誌面でオススメされていた「07 16 34」で固定。残り3数字を言われた通り、37以降から流した。
「キャリーオーバーもしていたし、久しぶりにロトを買ってみようかって。数字も書き出したのに買わないのはもったいないなって思ったんです」
その日、ワクチン予約のために引き出しを開けなければ切り抜きを見つけることもなかった。さらに抽せんまで時間がないから、売り場が休みだから、と買うのを諦めていたらこの当せんもなかったのだ。聞けば聞くほど不思議な話である。
「でも慌てていたんでしょうね。まったく同じ数字を2口買ってたり、逆に買い逃してしまった数字もありました」
結局、重複した数字は3等と4等に当せん。でも逆に買いそびれた数字も3等と4等に当たっていたので、プラマイゼロとのこと(笑)。
最終的に、この予想法がドンピシャ的中し、3等5口・4等20口・5等10口の計193万1500円当せんとなった。
当せんを知る経緯もいつもとは違ったという。その日の19時30分頃、みずほ銀行のサイトの当せん番号案内を見ると、記憶に新しい数字が並んでいた。その日の抽せん数字が更新されるのはいつも20時頃だと思っていたS・Sさんは、当初、前回の抽せん数字かと疑った。
でも、抽せん回を見てみると、今日買ったばかりのくじ券とまったく一緒。
「まさか……本当に……?」
信じられないS・Sさんは抽せん結果を前に固まってしまった。
すると、ちょうどそこへ旦那さんが帰宅。固まるS・Sさんを見て、思わずワクチン予約疲れかと勘違いするほど、いつもと様子が違っていた。しかし――。
「さっそく主人にバレちゃって。固まっていたのがアダになりましたね(笑)」
茶目っ気たっぷりに話すS・Sさん。
隠しておくこともできず、買ったくじ券1シートをあげたそうだ。これにはご主人も大喜び。
「主人は週末2、3日泊まり込みするほどの大の山好きで。ちょうど当たった3等の当せん金が富士山の標高(編集部注:詳しくは富士山の山頂中心にある火口・大内院の標高が3535メートル)ということで喜んでいました」
買いたかった楽器を購入。当せん前にはお金にまつわる夢も!
一方、S・Sさんは残りの当せん金をどうしたのかと聞いてみると。
「基本は貯金に。あとは欲しかった白いピアノとエレクトーンを買いましたね」
実はS・Sさん、以前はピアノ教室を開いていたほどの腕前。好きな音楽ジャンルはジャズ。専業主婦となってからもピアノは買いたいと思っていたそうだが、自分でお金を稼いでいなかった手前、どうしても遠慮があった。
「専業主婦だと、お金ってもらうものだという認識があって。うちはどちらかといえばかかあ天下だったかもしれませんが、お金にだけは引け目があったんです」
しかし、この当せんでお金に関してちょっとだけ立場が逆転したそうだ。
「笑い話ではあるんですが、以前から『もし宝くじが当たったら机の上に1万円置いて、いままでお世話になりました』ってやりたいって主人に言ってたんですね。まあ友人には『1万円はさすがに安いよ!』って突っ込まれましたけど(笑)」
それが今回、1万円どころか30万円を旦那さんにあげることができた。さらに今までは欲しくても遠慮してきたものも買えた。それがちょっとした優越感となったようだ。
「主人も定年退職して今は年金生活ですから、この臨時収入は嬉しかったみたいで。今度は富士山じゃなくてエベレスト級の当せん金がいいねって!(笑)」
冗談まじりに話してくれる当せんエピソードからは、ご夫婦仲睦まじい様子がひしひしと伝わってくる。好きなものを買える喜びとご家族で共有できる喜び、これぞ宝くじならではの醍醐味だ。
最後に、ここまで偶然が続いての当たりとなると、いっそ必然といえるのかもしれないと水を向けると……。
「そういえば、当たる前に不思議な夢を見ました」とS・Sさん。
日頃から夢はよく見るそうで、時には数字が出てくることも。
「夢に出た数字は記憶して買ったりもするんですが、その数字では当たった試しがありません」
そのほかに白い蛇が出る夢や引っ越しの荷物を片付ける夢もよく見るとか。今回見た夢はそれとも違ったそうで、ズバリ「鎌倉の銭洗弁天に行く夢」!
さらに亡きお父様が出てきて「お金をあげるから大切に使ってくれ」と言われたそう。ここまで来るとこの当たりも必然に思えてくる。冗談で飛び出したエベレスト級の当せん――ちなみにエベレストの標高は約8848メートル!――が現実になる日も近いかもしれないと思わせてくれる今回の取材となった。
※この記事は『ロト・ナンバーズ「超」的中法2021年9月号』の[夢の高額当せん者インタビュー]を一部抜粋変更したものです