第10回は野崎が担当します。
前回(第9回)はナンバーズ4の当せん金額(理論値)を解説しました。まずはおさらい。確認問題1、2を解説します。
前回の解答
問題1:
当せん数字が「123」のように3個の数字がすべて異なるとき
「ストレート」「ボックス」「セットストレート」「セットボックス」「ミニ」の理論上の当せん金額を計算してください。
解答:
当せん数字が「123」のように3個の数字がすべて異なるとき、それぞれの申込みタイプの当せん確率は第6回で解説したとおりで、表1のようになります。
前回のナンバーズ4の解説の通り、理論値とは「すべての数字の組み合わせ(ナンバーズ3は”000”~“999”の1,000通り)を同じ口数ずつ購入された場合」にもらえる当せん金額です。簡単にするため、すべての数字の組み合わせが1口ずつ購入されたとしましょう。
1口200円で1,000口購入され、約45%が当せん金額なので、
200 × 1000 × 0.45 = 90,000 円
が総当せん金額です。
あとは前回の記事と同様に計算をすれば,表1の当せん金額の理論値が出せます。例えば,ボックスの場合は、当せんした6口に均等に当せん金額が分配されるので
90,000 ÷ 6 = 15,000 円
と当せん金額が計算できます。
表1 抽せん数字が(1)(2)(3)のとき(3個の数字がすべて異なる場合)の当せん確率と当せん金額
問題2:
前回(第9回)では、ナンバーズ4の当せん金額を計算しました。理論値では、すべての数字の組合せを1口ずつ購入した場合を用いました。それでは、すべての数字の組合せを10口ずつストレートで購入した場合、ストレートの1口当たりの当せん金額は、いくらになるでしょうか?
同様に、すべての数字の組合せを10口ずつボックスで購入した場合、ボックスの1口当たりの当せん金額は、いくらになるでしょうか?
解答:
すべての数字の組み合わせを同じ数だけ買う場合は、理論値通りの当せん金額になります。したがって、ストレートの1口あたりの当せん金額は 900,000円です。同様にボックスの1口あたりの当せん金額は
抽せん数字が「1234」のように4個の数字がすべて異なる場合:37,500円
抽せん数字が「1123」のように4個のうち2個が同じになる場合:75,000円
抽せん数字が「1122」のように同じ数字の組み合わせが2組ある場合:150,000円
抽せん数字が「1112」のように4個のうち3個が同じになる場合:225,000円
となります。
ロトの当せん金について
「宝くじの当せん金には税金がかからない」などの宝くじの決めごとがなされている“宝くじの法律”が当せん金付証票法です。
宝くじは当せん金付証票法によって、次の取り決めがされています.
当せん金付証票の当せん金品の金額又は価格の総額は、その発売総額の五割に相当する額(加算型当せん金付証票にあつては、その額に加算金(第二条第二項の加算金をいう。以下同じ。)の額を加えた額)をこえてはならない。※1
※1 「当せん金付証票」第5条
この法律の内容をざっくりと言うと、ロトやナンバーズを含む全ての宝くじは当せん金額の総額が販売金額の50%までと決まっています。この割合のことを還元率と呼ぶことが多いようです。この記事でも慣例にならって、販売金額のうち当せん金額に充てられる割合のことを還元率と呼んでいくことにします。
それでは、ロト6の還元率は何%でしょうか? 残念ながら、ロト6の還元率は公式に公開されていません。還元率は高ければ高いほどお得なくじだと判断することができます。この記事の目的のひとつは、ロト6の還元率をざっくりと計算してみることです。
ロト6の当せん金の決め方は1等~4等を「パリミュチュエル方式」、5等を「固定賞金方式」と呼ばれる方式で決められています。
パリミュチュエル方式とは当せん金の売上額を一定の割合で当せん者間で分ける方法です。もう少し細かく説明すると、この方式では各当せん等級に対してあらかじめ当せん金額の何%が割り当てられるかが決まっています。各等級の当せん者にはその金額が均等に配分されます。
固定賞金方式とはロト6・5等やビンゴ5・7等のように原則固定で決まっているものです。
実は、パリミュチュエル方式による各等級の配分額の割合も情報が公開されていません。この記事のもう1つの目的は、各等級の配分率を調べることです。
今まで書いたことをまとめると、この記事の目的はロト6の還元率とパリミュチュエル方式の配分率を計算することです。これらの割合を計算するために、ロト6の情報としてよく公開されている「当せん金額の理論値」を利用していきます。表2は宝くじ公式サイトの各等級の当せん確率と当せん金額の理論値をまとめたものです。
表2:ロト6の当せん条件と当せん確率および当せん金額の理論値
※ 見込み当せん金額は理論値です。実際の当せん金額ではございません。
※ 当せん金額は、発売額と当せん口数により毎回変動します。
※ ボーナス数字は2等の当せんを決定するためだけに使います。
※100円未満の端数は切り捨てられます。
ロト6の還元率
1口のロト6を購入した時、その内のいくらが1等の賞金のために使われるのでしょうか? 同じように、1口のロト6を購入した時、その内のいくらが2等・3等・4等・5等の賞金のために使われるのでしょうか?
実は、1口(200円)の内、1等の賞金のために使われる金額は
(1口の内1等の賞金に使われる額)=
(1等の当せん金額の理論値)×(1等の当せん確率)
で計算することができます。他の等級についても同じで
(1口の内2等の賞金に使われる額)=
(2等の当せん金額の理論値)×(2等の当せん確率)
(1口の内3等の賞金に使われる額)=
(3等の当せん金額の理論値)×(3等の当せん確率)
(1口の内4等の賞金に使われる額)=
(4等の当せん金額の理論値)×(4等の当せん確率)
(1口の内5等の賞金に使われる額)=
(5等の当せん金額の理論値)×(5等の当せん確率)
で計算ができます。それぞれ表2の値を参考に計算してみると、
(1口の内1等の賞金に使われる額)= 200,000,000 × 1 / 6096454 ≒ 32.80596
(1口の内2等の賞金に使われる額)≒ 10,000,000 × 6 / 6096454 ≒ 9.84179
(1口の内3等の賞金に使われる額)= 300,000 × 216 / 6096454 ≒ 10.62913
(1口の内4等の賞金に使われる額)= 6,800 × 9990 / 6096454 ≒ 11.14287
(1口の内5等の賞金に使われる額)= 1,000 × 155400 / 6096454 ≒ 25.49023
(2等の部分は当せん金額の理論値に「約」がついているので、おおよその金額になっています)
これらの数字を足し合わせると、1口の内、賞金に使われる額を求めることができます。
(1口の内賞金に使われる額)≒ 89.90997
この数字は1口の金額に還元率をかけた値に等しいので,
200 × (還元率) ≒ 89.90997
となり,これを解くと
(還元率)≒ 0.44955
これをパーセントに直すと、還元率は約44.955% のようです。
ロト6の配分率
今度は配分率の計算をしてみましょう。言い換えると、「1等~4等の賞金の内、1等の賞金に充てられる割合はどれぐらいか?」を求めていきます。
配分率の計算には先程計算した「1口の内1等の賞金に使われる額」・「1口の内2等の賞金に使われる額」・「1口の内3等の賞金に使われる額」・「1口の内4等の賞金に使われる額」を使うと計算ができます。もう1度、これらの金額を書いておくと
(1口の内1等の賞金に使われる額)≒ 32.80596
(1口の内2等の賞金に使われる額)≒ 9.84179
(1口の内3等の賞金に使われる額)≒ 10.62913
(1口の内4等の賞金に使われる額)≒ 11.04248
でした.これらを足し合わせると
(1口の内1等から4等の賞金に使われる額)≒ 64.41974
になります.
1等への配分率は、1等に割り当てられる賞金の割合だったので
(1等への配分率)
=(1口の内1等の賞金に使われる額)/(1口の内1等から4等の賞金に使われる額)
≒0.5093
と計算できます。これをパーセントに直すと、1等への配分率は約50.93%とわかります。
同じように、2等・3等・4等への配分率を求めていきましょう。
(2等への配分率)
=(1口の内2等の賞金に使われる額)/(1口の内1等~4等の賞金に使われる額)
≒0.1528
(3等への配分率)
=(1口の内3等の賞金に使われる額)/(1口の内1等~4等の賞金に使われる額)
≒0.1650
(4等への配当率)
=(1口の内3等の賞金に使われる額)/(1口の内1等~4等の賞金に使われる額)
≒0.1730
以上から、配分率は表3のような割合になっていそうです。(足して100%にならないのは四捨五入の影響です)
表3: 1等~4等までの配分率(公開情報からの予想値)
1等 2等 3等 4等
50.93% 15.28% 16.50% 17.30%
ロト7・ミニロトについて
同じように計算をすると,ロト7やミニロトの配当率と配分率が計算できます.
ロト7の配分率は表4、ミニロトの配分率は表5と考えられます。
表4 ロト7の配分率(公開情報からの予想値)
1等 2等 3等 4等 5等 6等
28.78% 10.08% 14.10% 8.27% 20.45% 18.32%
表5 ミニロトの配分率(公開情報からの予想値)
1等 2等 3等 4等
65.70% 4.72% 8.18% 21.42%
ロト7やミニロトはパリミュチュエル方式で考えれば求めることができます。時間があるときに挑戦してみてください。
ちにみに、ミニロトにはキャリーオーバーはありません。
まとめ
宝くじの配分率が分かれば実際の当せん金の計算もおおよそわかります。もしビンゴ5のような新しい数字選択式宝くじが始まっても、計算することができます。
※次回は1月8日(月)更新予定です。
確認問題
表6はビンゴ5は当せん確率と当せん金(理論値)です。配分率を求めてください。
表6 ビンゴ5は当せん確率と当せん金(理論値)
等級 当せん条件 当せん確率 当せん金額(理論値)
1等 8ライン 1/390,625 5,556,200円
2等 6ライン 16/390,625 300,000円
3等 5ライン 48/390,625 45,000円
4等 4ライン 192/390,625 18,200円
5等 3ライン 1,248/390,625 2,500円
6等 2ライン 6,656/390,625 700円
7等 1ライン 56,832/390,625 200円(原則固定)
野﨑 隆之(のざき たかゆき)
2012年 東京工業大学 大学院理工学研究科博士課程修了。
現在、山口大学 大学院創成科学研究科 講師。
研究内容はデジタル情報を誤りなく伝送・保存する基礎技術である「誤り訂正符号」と、その理論である「符号理論」。
大学では「情報理論」や「情報ネットワーク」などの情報通信に関する授業を主に担当。
普段の研究でも、場合の数を数え上げをよく利用している。
イラスト/シライカズアキ